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おなかの不調

「便潜血陽性」…症状がなくても油断しないでください。安心のために、今こそ大腸内視鏡検査を。

最近「健康診断で便潜血が見つかり要精密検査と言われたけど不安だ」「痔があるから多分放っておいても大丈夫だろう」といった声を耳にします。便潜血(便に混じる微量な血液)は自分では気づけないものですが、大腸の異常を早期にキャッチする大事なサインでもあります。特に40代以上の方で健診の便潜血検査が陽性だった方は、この機会にぜひ一度大腸の専門検査を受けてみませんか。今回は、便潜血検査の仕組みや限界、陽性になる原因となる病気の具体例、そして大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の重要性について、できるだけわかりやすくお話しします。ご自身のことかもしれないと思いながら、どうぞ最後までお読みください。

便潜血検査とは何か~仕組みと限界~

便潜血検査は、便に混ざったごく微量の血液の有無を調べる検査です。肉眼では見えない微小な出血も検出できるため、大腸がんのスクリーニング検査として広く用いられています。たとえば大腸がんの表面にできた傷から少量の出血が起きても、便潜血検査が陽性になることで症状が出るより早く異常を発見できる可能性があります。現在日本で行われている便潜血検査は免疫学的方法といって、人間のヘモグロビン(血液)にだけ反応する方式です。以前の化学的方法と異なり、肉や魚に含まれる動物の血液や一部の野菜などの影響で誤って陽性になる心配はほとんどありません。つまり、「ヒトの大腸からの出血」に特異的に反応する検査なのです。

とはいえ、便潜血検査にも限界があります。この検査はあくまで「便に血が混じっているか」を調べるものなので、精度が完全ではないのです。偽陽性(実際には病気がないのに陽性と出る)や偽陰性(病変があるのに陰性と出て見逃される)の可能性がどうしてもあります。たとえば痔による出血や一時的な腸炎でも陽性反応が出ることがありますし、逆に大腸がんがあっても出血量が少なければ陰性となってしまうこともあります。実際、進行した大腸がんの約30%は便潜血検査が陰性になるとの報告もあり、早期がんならその割合は50%にも上ると指摘されています。このように1回陰性だったからといって「絶対安心」とは言い切れないのです。反対に、便潜血が陽性でもそれだけで原因までは特定できません。したがって、便潜血検査で陽性になった場合には必ず精密検査(大腸内視鏡など)が必要になるのです。

便潜血が陽性になるのはどんなとき?

検診で便潜血が陽性になると「もしかして大腸がんでは?」と不安になりますよね。確かに陽性反応の主な原因として注意すべきは大腸がん大腸ポリープです。これら大腸の腫瘍性病変は消化管の内壁から出血しやすく、便に血液が混じる典型的な原因です。しかし実際には、それ以外にもさまざまな病気で便潜血検査が陽性になります。たとえば胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍や、潰瘍性大腸炎クローン病といった炎症性腸疾患でも、腸管の粘膜がただれて出血するため陽性になり得ます。一時的に大腸の血流が悪くなって潰瘍が起きる虚血性腸炎でも血便が出ることがあります。同様に、痔(痔核)肛門裂傷(切れ痔)など肛門周辺の出血も陽性反応の一因です。実際、痔からの出血でトイレットペーパーが真っ赤になるようなケースでは慌てて受診する方が多いですが、痔による少量の出血でも便潜血検査は引っかかってしまいます。女性の場合は生理中に検査を受けて便に経血が混じっただけで陽性になることもあります。

さらに考えられる原因として、薬剤の影響も挙げられます。アスピリンや消炎鎮痛薬(いわゆる痛み止めのNSAIDs)を長期間服用している方は、腸の粘膜がわずかに傷ついて目に見えない出血をきたすことがあります。寄生虫症や腸の感染症でもまれに出血することがあります。このように、便潜血検査の陽性には痔など命に関わらない病気から、大腸がんのように重篤な病気まで非常に幅広い原因が潜んでいます。だからこそ、健診で陽性を指摘されたら「きっと大したことないだろう」と自己判断せず、できるだけ早く専門医を受診して原因を確かめる必要があるのです。

大腸がんは身近な病気~統計で見る現状~

日本人にとって大腸がんは非常に身近で多い病気です。今や「日本人の2人に1人が一生のうちにがんになる」と言われる時代ですが、中でも男女合わせて最も患者数が多いがんが大腸がんです。国立がん研究センターの統計によれば、2021年に新たに大腸がんと診断された人は約15万4585人にも上り、全てのがんの中で最も多くを占めました。男女別に見ると、男性では前立腺がんに次いで2番目、女性では乳がんに次いで2番目に罹患数が多く、男女合計では大腸がんがトップとなっています。

死亡者数の面でも大腸がんは無視できません。厚生労働省の2023年統計では、大腸がんは女性のがん死亡原因の第1位、男性でも肺がんに次ぐ第2位を占めています。実際、2023年に大腸がんで亡くなった方は男性で約2.2万人、女性で約1.6万人に上っています。こうした大腸がんの死亡率を下げるため、自治体の住民健診や企業健診、人間ドックなどで便潜血検査による大腸がん検診が広く行われています。日本では原則40歳以上の方を対象に毎年1回の検診受診が推奨されており、これを継続することで大腸がんの死亡率を低下させられることが証明されています。ある研究では、40歳以上の人が毎年便潜血検査を受け続けることで大腸がん死亡リスクを60~80%も減らせたとの報告もあります。

しかし残念ながら、日本の大腸がん検診受診率はまだ低水準で、陽性と判定された後の精密検査受診率も約54%にとどまっているのが現状です。せっかく検診で陽性が出ても半数近くの方が大腸カメラなどの精密検査を受けていない計算であり、これではせっかくの早期発見のチャンスが無駄になってしまいます。大腸がんは早期に発見できれば90%以上が治るとも言われています。検診で要精密検査となった場合には、できるだけ早く次の検査に進むことが大切です。放置することで命を縮めてしまわないよう、どうか注意してくださいね。

ポリープががんになるまで~「予防できるがん」~

大腸内視鏡検査では時々ポリープと呼ばれるできものが見つかることがあります。ポリープとは大腸の粘膜にできる小さな隆起で、多くは良性(腫瘍ではない)ですが、種類によっては徐々にがん化するものがあります。実は大腸がんの約9割以上は、もともと腺腫性ポリープという良性ポリープが時間をかけてがん化したものだとされています。この腺腫→がんへの進行には一般的に5~10年程度かかると考えられます。つまり、大腸がんは一朝一夕にできるものではなく、数年~10年かけてポリープからがんへと成長していくのです。そのため大腸がんは「予防できるがん」とも言われています。がん化のプロセスにこれだけ時間がかかることから、ポリープのうちに切除してしまえば将来の大腸がんを未然に防ぐことができるからです。

反対に、ポリープを放置してしまうと将来的にがんに進行するリスクがあります。実際、「腺腫性ポリープを10年以上放置すると20~30%ががんに進む」とのデータもあり注意が必要です。大腸ポリープ自体は命に関わる病気ではありませんが、やがて一部はがんのタネになる可能性があることを知っておいてください。

幸い大腸内視鏡検査ではポリープが見つかったその場で切除できる場合が多くあります。いわゆる日帰りでのポリープ切除も可能で、しかも鎮静剤で眠った状態で行うため痛みや恐怖感もほとんどありません。こうした内視鏡治療によってポリープの段階で取り除いておけば、大腸がんを予防できるわけです。「ポリープを取ると本当に違いがあるの?」と思われるかもしれませんが、実際に大腸内視鏡でポリープを切除した人はその後の大腸がん死亡率が53%も低下したとの研究報告があります。また、厚労省の統計でも大腸がん検診の受診率が高い地域ほど大腸がん死亡率が低いことが確認されており、定期的な内視鏡検査とポリープ切除が寿命の延伸に直結することは科学的にも裏付けられています。

健診で陽性を指摘されたら放置しないで!

ここまでお読みになって、「陽性とはいえ痔のせいかもしれないし…」と様子見をしている方はいませんか?たしかに便潜血が陽性でも必ずしも大腸がんが見つかるわけではありません。しかし、「たまたま便に血が付いただけだろう」と放置するのは非常に危険です。便潜血検査は大腸や直腸の異常を早期に発見するための重要な検査であり、陽性になったということはどこかの消化管で出血が起きている可能性が高いことを意味します。

その原因がもし大腸がんだった場合、早期に治療すれば完治が望める病気ですが、放置して進行してしまうと治療が難しくなるおそれがあります。ポリープが出血の原因だった場合も、「良性だから大丈夫」と油断はできません。前述したようにポリープの一部は将来的にがん化するリスクがあるため、やはり放っておいて良いものではないのです。さらに炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎等)や消化性潰瘍憩室炎など他の病気が隠れている可能性も否定できません。これらも治療せずに放置すると症状が悪化・重症化する恐れがあります。

要するに、便潜血が陽性である以上、何らかの異常が起きていることは確かなのです。「自分は大丈夫」と決めつけず、必ず医療機関で大腸内視鏡検査などの精密検査を受けてください。早めにきちんと検査を受けて異常がなければ安心できますし、万一病気が見つかっても早期で対処できれば怖がる必要はありません。大腸がん検診で陽性を指摘された方は、決してそのままにせず次の一歩を踏み出しましょう。

症状がなくても検査が重要な理由

「自分はお腹の調子も良いし、検診も引っかからなかったから大丈夫」と思っている方ほど注意が必要です。というのも、大腸ポリープや早期の大腸がんの多くは無症状で経過するからです。お腹の痛みも便通の異常も何もないまま静かに病変が進み、ある程度進行してから初めて症状が現れるケースは珍しくありません。裏を返せば、症状がない人ほど検査で早めにチェックすることが大切なのです。実際、便潜血検査で陰性だった人からポリープや早期がんが見つかることもあります。便潜血検査自体も万能ではなく、陰性でもポリープが全く無いとは言い切れません。健康診断で特に異常を指摘されていなくても、40歳を過ぎたら定期的に大腸検査を受けることをぜひご検討ください。

たとえば大腸内視鏡検査は、大腸の状態を直接すみずみまで観察できる唯一の検査です。先に述べたようにポリープの切除も同時に行えるため、大腸内視鏡は診断と治療を兼ねた画期的な検査でもあります。症状が全く無い人でも、家族に大腸がんの方がいる場合や便通異常が続いている場合、健診で便潜血陽性だった場合などは、たとえ元気でも一度大腸カメラ検査を受けておくことをおすすめします。無症状のうちに異常を見つけて対処することこそが、健康長寿のポイントだと言えるでしょう。

大腸内視鏡検査は怖くありません

精密検査として「大腸カメラを受けましょう」と言われても、「痛そうだし恥ずかしい…」と二の足を踏んでしまう方は少なくありません。しかしどうかご安心ください。大腸内視鏡検査は決して怖い検査ではありません。現在では検査中の苦痛を大幅に軽減するための様々な工夫がなされ、安全性も確立された検査となっています。

最大の安心材料は鎮静剤(静脈麻酔)の使用です。ご希望に応じて検査前に鎮静剤を点滴し、ウトウト眠っている間に検査が終わるようにすることができます。実際、「いつの間にか終わっていた」とおっしゃる患者様も多く、痛みや恐怖をほとんど感じずに検査を受けられます。過去に検査でつらい思いをした方ほど、この鎮静下での検査をぜひ検討してみてください。麻酔と聞くと不安になるかもしれませんが、検査中はモニターで血圧や酸素濃度を厳重にチェックし、安全に十分配慮しています。鎮静剤を使うことで患者様の身体に余計な力が入らず検査がスムーズになるため、結果的に安全性も高まるというメリットがあります。

また、近年は内視鏡機器自体の進歩も著しく、カメラの細径化や画像性能の向上が進んでいます。現在主流の大腸カメラは直径1cm弱の細いスコープで、挿入時の違和感が従来より格段に軽減されています。さらに高精細な画像によって視野が飛躍的によくなり、数ミリの小さなポリープや粘膜のわずかな変化も見逃しにくくなっています。大腸内視鏡検査は大腸がんの早期発見・早期治療に極めて有効であり、厚生労働省も便潜血検査陽性時の精密検査として内視鏡検査を推奨しています。合併症(大腸に傷が付くなど)はごくまれですし、経験豊富な医師のもとで適切に行えば過度に心配する必要はありません。どうか怖がらずに、安心して検査に臨んでくださいね。

古橋医院ならではの安心できる検査体制

当院・古橋医院では、地域の皆様に安心して大腸内視鏡検査を受けていただけるよう万全の体制を整えております。最後に、当院の内視鏡検査の特長をご紹介します。

  • 経験豊富な専門医が検査を担当: 大学病院で長年研鑽を積んだ消化器内視鏡の専門医が大腸カメラ検査を行います。担当医師は大学病院の内視鏡科で13年間にわたり専門診療・研究に携わってきた経歴を持ち、最新技術を駆使した苦痛の少ない内視鏡検査を得意としています。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医の資格も有しており、胃がん・大腸がんの早期発見から内視鏡治療まで精通しております。熟練の医師が検査を行うことで、微細な異常も見逃さず、しかも丁寧で優しい検査を心がけています。
  • 鎮静剤を用いた苦痛の少ない検査: 希望される方には鎮静剤による眠った状態での内視鏡検査を提供しています。「以前つらかった大腸カメラが嘘のように楽に受けられた」と好評で、初めて検査を受ける方も安心です。
  • 最新の高性能機器を導入: 検査機材には最新式のオリンパス製内視鏡システムを導入しています。画像が非常に鮮明で、小さなポリープや粘膜のわずかな変化も発見しやすく、消化器がんの早期発見に威力を発揮します。スコープ(カメラ)も極細径タイプを採用し、挿入時の負担軽減に努めています。クリニック規模ではありますが、大学病院レベルの機器と技術を地域医療に提供することを目指しています。
  • きめ細やかな説明とサポート: 検査の前には医師が直接じっくりと問診・診察を行い、不安や疑問に丁寧にお答えします。結果説明では実際の内視鏡画像をお見せしながら、現在の大腸の状態を分かりやすくご説明します。アットホームな雰囲気づくりを心がけており、高齢の方でも落ち着いて検査を受けていただけます。

「健康寿命」を守るために今できること

大腸がん検診で陽性が出ても、「自覚症状がないしそのうち行こう」とつい先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、健康寿命をのばすためには、体からのサインを感じたときに早めに対処することが何より大切です。お腹の中で異変が起きているかもしれないのに見て見ぬふりをしていては、せっかくの毎日も思い切り楽しむことができませんよね。もし健診で便潜血の異常を指摘されて不安を感じているなら、どうか怖がらずに専門医の扉をたたいてみてください。私たちは地域のかかりつけ医として、皆さまの不安に寄り添いながら診療いたします。

「便潜血陽性」は体からの大切なサインです。
何もなければ安心。何かあっても、早く見つければ治せます。
どうか、未来のために一歩踏み出してください。

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