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よくある疾患

ピロリ菌ってなに? — 感染原因から検査・除菌治療までやさしく解説

最近、「健診でピロリ菌が陽性と言われたけど、どうしたらいいの?」「胃の調子が悪いけど、もしかしてピロリ菌かな?」といったご相談をよく耳にします。実際、当院でも「ピロリ菌がいると言われましたが、すぐに治療が必要でしょうか?」というお問い合わせが増えてきました。ピロリ菌(正式にはヘリコバクター・ピロリ)は胃の中に住みつく細菌で、日本人では特に40代以上の世代で感染者が多いことが知られています。感染していても自覚症状がないことも多いのですが、放置すると慢性胃炎胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんなど重大な病気につながる恐れのある、油断できない菌なのです。

そこで今回は、ピロリ菌の感染原因、感染によって起こり得る代表的な病気(慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんなど)、検査方法(尿素呼気試験、抗体検査・便検査、内視鏡検査による生検など)、そして除菌治療の流れについてお話しします。あわせて、胃カメラ(上部内視鏡)検査の重要性や、症状がなくても検査を受けるメリット、さらにピロリ菌除菌後の経過観察の必要性についても説明します。できるだけ専門用語は避け、わかりやすく噛み砕いて解説しますので、どうぞ最後までお付き合いください。

ピロリ菌とは?どうやって感染するの?

ピロリ菌は正式名称をヘリコバクター・ピロリといい、らせん状の形をした胃の中に生息する細菌です。強い胃酸の中でも生きられるよう、自ら胃酸を中和する酵素(ウレアーゼ)を出すことで胃の中でも生き続けることができます。一度胃に住みつくと、除菌しない限りずっと胃の中に居着いてしまうのが特徴です。

感染経路の多くは幼少期
ピロリ菌がどのように感染するかは完全には解明されていませんが、主な原因は経口感染(口から菌が入ること)だと考えられています。例えばピロリ菌に感染した人の唾液や歯垢を介してうつることが多いと言われ、昔は親が噛み砕いた食べ物を子どもに与える習慣があったため、そのような世代では感染率が高い傾向があります。実際、ピロリ菌の多くは免疫力が未発達な幼児期(5歳頃まで)に感染し、そのまま大人になるまで持続感染することがほとんどです。逆に言えば、子どもの頃に感染しなかった人が大人になってから新たにピロリ菌に感染することはほとんどないとされています。

衛生環境と感染率
ピロリ菌は家庭内での接触以外に、井戸水など衛生状態の悪い水や食べ物を介して感染することもあります。戦後間もない頃は上下水道が未整備で、生水からピロリ菌に感染してしまう例もありました。そのため、衛生環境が十分でなかった時代に幼少期を過ごした世代ほど感染率が高く、実際50代以上では約半数の方がピロリ菌に感染しているとのデータもあります。一方で、上下水道が普及した現代では若い世代の感染率は大幅に低下しており、日本におけるピロリ菌感染者は年々減少傾向にあります。

ピロリ菌感染が引き起こす主な病気

慢性胃炎(萎縮性胃炎)
長年ピロリ菌が胃に住みつくと、胃粘膜に慢性的な炎症(慢性胃炎)が生じます。ピロリ菌が出す毒素や、それに対する免疫反応によって胃の粘膜が荒れ、次第に粘膜が薄く弱っていきます。この状態を萎縮性胃炎といい、ピロリ菌感染者の胃でしばしば認められます。萎縮性胃炎そのものは自覚症状がないことも多いですが、後述する胃潰瘍や胃がんの土壌(リスク要因)となるため注意が必要です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染は、胃や十二指腸の粘膜にただれや潰瘍を作る大きな原因でもあります。実際、ピロリ菌に感染していると潰瘍になるリスクは未感染の人の約18倍になるとの報告もあります。潰瘍ができると上腹部の痛みや吐き気、出血に伴う黒色便(タール状の黒い便)などの症状が現れます。ピロリ菌を除菌することで、これら潰瘍の再発リスクは大幅に減らすことができます。

胃がん
ピロリ菌感染は日本人の胃がんの主要因であり、国際的にもピロリ菌は明確な発がん因子とされています。ピロリ菌による長年の胃粘膜の炎症(萎縮性胃炎)が胃がん発生の下地となってしまうのです。ピロリ菌に感染している人は未感染の人に比べ胃がんになるリスクが15倍以上高いというデータもあります。しかし一方で、ピロリ菌を除菌することで胃がんになるリスクは約3~5割減少すると報告されています。ただし、除菌すればもう安心というわけではありません。前述のようにピロリ菌によって萎縮してしまった胃粘膜は元には戻らないため、除菌後も胃がんリスクはゼロにならないのです。ピロリ菌に一度でも感染したことのある方は、その後も定期的に胃カメラ検査を受けて早期発見に努めることが非常に重要になります。

※このほか、ピロリ菌感染者に発生しやすい胃のポリープ(過形成性ポリープ)や、まれにピロリ菌が関与する胃の悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)なども知られています。過形成性ポリープはピロリ菌除菌によって約7割が縮小・消失することが報告されており、またMALTリンパ腫という特殊な病気もピロリ菌除菌で治癒が期待できる場合があります。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌に感染しているかどうかは、症状や胃の調子だけでは判断できません。胃の不調がある方や健康診断でピロリ菌陽性と言われた方は、医療機関でピロリ菌の検査を受ける必要があります。検査方法はいくつかありますが、ここでは主なものをご紹介します。

  • 尿素呼気試験: ピロリ菌検査でよく用いられる方法です。検査薬(尿素)を服用してしばらく待った後、息を吐き出してその中の成分を調べます。ピロリ菌がいると服用後の息中の二酸化炭素濃度が高くなるため、その変化で感染を判定します。薬を飲んで息を採るだけで痛みは全くなく、比較的簡単に受けられる検査です。
  • 血液検査(抗体検査): 採血によって血液中にピロリ菌に対する抗体があるかを調べる方法です。ピロリ菌に感染すると身体は菌に対する抗体を作るため、その有無で感染の経験を推測できます。ただし、過去に感染して除菌済みの場合でも抗体が陽性のまま残ることがあるため、現在ピロリ菌に感染しているかの判定には注意が必要です。
  • 便検査(抗原検査): ピロリ菌の抗原(菌由来のタンパク質)が便中に排泄されるのを調べる検査です。少量の便を提出し、その中にピロリ菌の抗原が含まれているかを調べます。便を取るだけで良いので手軽ですが、検査結果が出るまでに日数を要することがあります。
  • 内視鏡検査(胃カメラでの生検): 胃カメラ(上部消化管内視鏡)を用いて直接胃の中を観察し、胃粘膜の一部を採取(生検)して調べる方法です。採取した組織を使って迅速ウレアーゼ試験(ピロリ菌の酵素反応を見る試験)や鏡検法(染色して顕微鏡で菌を観察する方法)、培養法(菌を培養して増やし確認する方法)などでピロリ菌の有無を判定します。内視鏡検査は体への負担がありますが、同時に胃の粘膜状態(炎症や潰瘍の有無、ポリープ・がんの有無)を直接確認できるという大きなメリットがあります。

胃カメラ検査の重要性(無症状でも受けるメリット)

「胃カメラは苦しそうだし嫌だ…」「症状もないのに検査を受ける必要あるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、ピロリ菌に感染している方や過去に感染していた方には、症状がなくても定期的に胃の検査(胃カメラ)を受けることが強く推奨されています。その理由は、ピロリ菌による萎縮性胃炎の状態では自覚症状がないまま病気が進行している可能性があるからです。実際、早期の胃がんや小さな胃潰瘍・十二指腸潰瘍は痛みなどの症状がほとんど出ない場合も多く、症状が出てからでは病気がかなり進行してしまっていることもあります。無症状のうちに異変を見つけ出すことが、早期治療・完治の近道です。胃カメラ検査を受ければ、ピロリ菌による胃のダメージ具合を評価できるだけでなく、肉眼ではわからないような小さな病変も発見することができます。前述したようにピロリ菌を除菌した後も胃がんリスクは残りますので、特に40代以上の方は「自分は大丈夫」と油断せず、年に1回程度は胃カメラ検査を受けることをおすすめします。

「とはいえ胃カメラ検査は苦しいのでは…」と不安な方もご安心ください。現在では鎮静剤(いわゆる眠る麻酔)を使った胃カメラも可能で、ウトウトしている間に検査が完了します。当院でも鎮静剤を用いた内視鏡検査を行っており、「気づいたら終わっていた」「全くつらくなかった」というお声もいただいています。胃カメラが初めての方、以前つらい思いをされた方でも、鎮静剤を使えばリラックスして検査を受けられますので、「怖い」「苦しい」というイメージを抱えたまま我慢するよりも、ぜひ一度検査に挑戦してみてください。

ピロリ菌の除菌治療の流れ

検査の結果ピロリ菌感染がわかったら、除菌治療(お薬で菌を退治する治療)を行うことをおすすめします。除菌治療は通常、2種類の抗生物質と 1種類の胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)の計3種類の薬を 1日2回ずつ、7日間連続で服用します。お薬を飲むだけの治療で入院の必要はなく、服薬中はアルコール摂取を控える等の注意事項はありますが、多くの方はご自宅で問題なく治療を完了できます。

7日間きちんと薬を飲み切れば、1回目の除菌で約 80% 程度の方はピロリ菌の除去に成功するとされています。しかし近年、ピロリ菌が抗生物質に対して耐性(効きにくい性質)を持つケースも増えており、1回目の治療で除菌できないこともあります。もし一次除菌(1回目の治療)が失敗に終わってしまってもご安心ください。効果が不十分だった場合は、抗生物質の種類を変えた二次除菌(2回目の治療)を追加で行います。2回目まで行うことで最終的には9割以上の患者様で除菌に成功できるのが一般的です。

二次除菌まで行ってもなおピロリ菌が残ってしまうケースはごく稀ですが、その場合は三次以降の除菌(保険適用外の治療)を検討することもあります。ただし、三次以降の除菌成功率はやや下がり(7割前後とされています)、また使用できる薬剤も限られてきます。そのため、まずは一・二次の除菌を医師の指示通り確実に完遂することが大切です。途中で自己判断で服薬を中断したりせず、決められた期間きちんと飲み切るようにしましょう。

除菌治療中に現れる可能性のある副作用としては、下痢・軟便、味覚の変化、発疹などがありますが、ほとんどの場合は軽度で一時的なものです。体質によっては抗生物質でお腹がゆるくなることがありますので、気になる症状が強く出た際は遠慮なく医師にご相談ください。

除菌後の判定検査も忘れずに行います。7日間の服薬が終わったら、約 1~2 か月後にピロリ菌が確実にいなくなったかどうかの検査をします。多くは再度尿素呼気試験などで確認を行い、陰性(ピロリ菌がいない)と判定されれば除菌成功です。もし残念ながら除菌失敗となった場合は、薬を変更した二次除菌治療を改めて行います。除菌が成功したかどうかは症状では判断できないため、必ず検査でチェックすることが重要です。

除菌後の経過観察も忘れずに

ピロリ菌の除菌に成功した後も、油断せずに胃の経過観察を続けましょう。繰り返しになりますが、除菌によって胃がんや潰瘍のリスクは大幅に減少するもののゼロにはなりません。とくに長年の感染で胃粘膜が萎縮してしまっている方は、その後も年に1回程度の定期的な胃カメラ検査で状態をチェックしていくことが望ましいです。また、胃の健康維持のためには塩分を控えめにする・禁煙するなど生活習慣の改善も大切です。ピロリ菌を除菌して終わりではなく、その後もご自身の胃と上手に付き合っていくことで、将来の胃がんリスクをさらに下げることにつながります。

当院の胃カメラ検査は「苦痛が少なく安心」です

ピロリ菌が気になる方、胃の検査をご検討中の方は、ぜひ当院にご相談ください。当院では患者様に安心して検査を受けていただけるよう様々な工夫を凝らしています。「痛くない胃カメラ」をモットーに、初めての方でもリラックスして受けられる内視鏡検査を提供しております。その特徴をいくつかご紹介します。

  • 鎮静剤による苦痛の少ない胃カメラ(初めてでも安心): ご希望に応じて静脈麻酔(鎮静剤)を使用し、ウトウト眠っている間に検査を行います。のどの違和感や嘔吐反射(オエッとなる感じ)を大幅に軽減でき、苦痛の少ない検査が可能です。検査中は脈拍・血圧・酸素濃度などをモニターで監視し、安全管理も徹底しています。内視鏡検査が初めての方もどうぞご安心ください。
  • 最新のオリンパス内視鏡による鮮明画像で早期発見: 2023 年に導入したオリンパス社製の最新式内視鏡システム(EVIS X1)により、従来よりも高精細な画像で胃粘膜をくまなく観察できます。特殊な光の画像強調機能も備えており、微細な病変も見逃しません。最新機器を駆使した精密検査で、胃がんの早期発見に努めています。
  • 大学病院で 10 年以上の経験を積んだ内視鏡専門医による検査: 検査は消化器内視鏡の専門医が担当します。東京慈恵会医科大学附属病院の内視鏡科で13 年間にわたり専門診療と研究に携わった経歴を持ち、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医の資格も取得しているエキスパートです。胃がん・大腸がんの早期発見から内視鏡治療まで精通しており、培った経験と技術を活かして質の高い検査を行います。

ピロリ菌の検査・治療や胃カメラ検診について気になることがありましたら、古橋医院までお気軽にご相談ください

ピロリ菌がいると、胃がんのリスクは5〜10倍に。
症状がなくても、胃の中では静かに炎症が進むことがあります。
検査はわずか数分。鎮静剤で“眠っている間に”終わります。
早めのチェックで未来の胃を守りましょう。

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