大腸がんとは

大腸がんとは、大腸の壁にできるがんです。近年、わが国の大腸がんによる死亡は増加しています。日本人の死亡原因の第一位は「がん」ですが、部位別でみると大腸がんは女性で第一位、男性は第二位となっています。一方、予防法や治療法は進歩しつづけており、早期発見することで死亡リスクを大幅に減らすことができます。

 症状

大腸がんの症状としては、以下のようなものがあります。これらの症状が出た場合には、早めに医師の診察を受けることが重要です。

  1. 変形した便や血便:大腸がんによって、便が細くなったり、血便が生じたりすることがあります。
  2. 腹部の痛みや不快感:大腸がんが進行すると、腹部に痛みや不快感が生じることがあります。
  3. 腸の動きの変化:大腸がんによって、腸の動きが異常になり、便秘や下痢が続くことがあります。
  4. 腹部の腫れ:大腸がんが進行すると、腹部に腫れが生じることがあります。
  5. 体重減少や貧血:大腸がんが進行すると、体重が減少したり、貧血が生じたりすることがあります。

これらの症状が出た場合には、早めに医師の診察を受けることが重要です。

一方、初期段階である早期がんの状態では、症状がありません。このため、定期的な大腸がん検診(便潜血検査)や大腸内視鏡によるスクリーニング検査を受けることで、症状の早期発見につながります。

 原因

大腸がんになりやすい人には、以下のようなリスクファクターがあります。

  1. 年齢:大腸がんは、50歳以上の年齢層で発症することが多く、年齢が上がるにつれて発症率が高くなります。
  2. 遺伝的要因:大腸がんは、その他のがんに比べて遺伝的要因が強いことが知られています。家族に大腸がんや大腸ポリープの患者がいる場合や、遺伝的な疾患(リンチ症候群等)を持っている場合は、大腸がんになりやすいとされています。
  3. 食事内容:高脂肪食、高カロリー食、低繊維食、赤身肉や加工肉の摂取が多い食生活は、大腸がんの発症リスクを高めます。近年の食の欧米化は、日本人の大腸がん発生リスクを高めている原因であるとされています。
  4. 肥満や運動不足:肥満や運動不足は、大腸がんの発症リスクを高めるとされています。
  5. 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を患っている場合は、大腸がんの発症リスクが高まるとされています。

これらのリスクファクターがある場合には、定期的な大腸がん検診(便潜血検査)や大腸内視鏡によるスクリーニング検査を受けることが重要です。また、健康的な生活習慣を心がけることも、大腸がんの発症リスクを減らすことにつながります。

 予防するには

大腸がんを予防するためには、以下のような方法があります。

  1. 健康的な生活習慣を維持する:バランスの良い食事、十分な運動、適度な睡眠、ストレスを軽減することが大切です。
  2. 喫煙や過度な飲酒を避ける:喫煙や過度な飲酒は、がんのリスクを高めるとされています。
  3. 体重を管理する:肥満は大腸がんのリスクを高めることが知られていますので、健康的な体重を維持することが大切です。
  4. 定期的な大腸がん検診を受ける:大腸がんは初期段階では症状が出にくいため、定期的な大腸がん検診(便潜血検査)を受けることが重要です。
  5. 大腸内視鏡検査を受ける:日本の大腸がん検診は「便潜血検査」を用いて実施されていますが、すべての大腸がんが検出できるわけではありません。大腸がんの前段階である大腸腺腫を検出することは非常に困難です。このため欧米では、40歳になった段階で全員が大腸内視鏡を受けることを推奨している国も増加しています。内視鏡で治療可能な段階で早期発見・早期治療することができれば、大腸がん死亡を減らせるだけではなく、不要な手術を回避でき、患者さんのQOL(生活の質)向上や医療費の削減もつながるからです。
  6. 遺伝子検査を受ける:大腸がんには遺伝子的なリスクファクターがあるため、家族に大腸がんの患者が多数いる場合には、遺伝子検査を受けることが推奨されています。

これらの予防方法を実践することで、大腸がんの発症リスクを減らすことができます。

 治療方法

大腸がんの治療方法は、病気の進行度合いや患者の状態に応じて異なります。以下に、一般的に用いられる大腸がんの治療方法をいくつか挙げます。

  1. 内視鏡治療:早期の大腸がんで粘膜下層の浸潤距離が1,000μmまで(Tis癌あるいはT1a癌)であれば、基本的には内視鏡治療のみで根治可能です。ただし、このような早期の段階では症状が出づらいため、無症状の段階から定期的な大腸がん検診や内視鏡検査を受けていることが重要です。
  2. 手術:大腸がんの初期段階であれば、腫瘍を切除する手術が行われます。腫瘍が進行している場合は、周囲の組織やリンパ節とともに切除されることがあります。
  3. 放射線療法:がん細胞を破壊するために、X線やガンマ線などの放射線を照射する治療法です。手術後に再発を防ぐために行われる場合や、腫瘍が大きく手術が困難な場合に用いられます。
  4. 化学療法:がん細胞を攻撃する抗がん剤を使用する治療法です。手術後に再発を防ぐために行われる場合や、腫瘍が進行している場合に用いられます。
  5. 標的治療療法:がん細胞の成長を制御する特定のタンパク質を標的にした治療法です。がん細胞に損傷を与えることで、がん細胞の増殖を抑制することができます。
  6. 免疫療法:免疫チェックポイント阻害薬により治療可能な場合があります。

病気の進行度合いや患者の状態に応じて、医師が最適な治療法を選択します。