潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患の一種で、大腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の病気です。近年になり患者数が急激に増加しています。
症状
潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症による疾患で、次のようなものがあります。
- 下痢
- 血便
- 腹痛
- 便秘
- 発熱
- 脱力感
- 食欲不振
一般的な消化器症状の他に、潰瘍性大腸炎に特有の症状もあります。
以下に、他の疾患との違いや潰瘍性大腸炎特有の症状を説明します。
- 血便:下痢や便秘に加えて、鮮血や茶色がかった血液が便に混ざることがあります。
- 腸閉塞:狭窄や腫瘤などによって、腸管の通過が困難になり、腹痛、嘔吐、膨満感などの症状が現れます。
- 痔:肛門周囲に出血や腫れが現れ、排便時の痛みを引き起こすことがあります。
- 関節炎:約30%の患者に関節炎が発生することがあり、手足の痛みや腫れ、運動制限が現れます。
- 皮膚症状:口唇炎、紅斑、ニキビ様発疹など、皮膚症状が現れることがあります。
- 目の症状:結膜炎、網膜症、瞳孔の異常、目の痛みなどが現れることがあります。
これらの症状がある場合には、潰瘍性大腸炎の可能性があるため、専門家の診断を受けることをおすすめします。
原因
潰瘍性大腸炎の原因は、まだ完全には解明されていませんが、免疫系の異常によって引き起こされると考えられています。遺伝的な要因も関与している可能性があります。
潰瘍性大腸炎は、誰にでも発症する可能性がありますが、以下のような方がなりやすいとされています。
- 年齢:10代から40代にかけての若年層が最も発症しやすいとされています。
- 遺伝的要因:親族に潰瘍性大腸炎の人がいる場合、発症するリスクが高くなるとされています。
- 生活習慣:喫煙、高脂肪食、ストレス、運動不足などがリスク因子となる可能性があります。
- 自己免疫疾患の既往歴:リウマチ、自己免疫性甲状腺疾患などの自己免疫疾患を患っている人は、潰瘍性大腸炎を発症しやすいとされています。
ただし、これらの要因があっても必ずしも潰瘍性大腸炎を発症するわけではなく、発症する人としない人があります。また、これらの要因がない人でも発症する可能性があるため、注意が必要です。
診断方法
潰瘍性大腸炎の診断には、下記のような検査が行われることがあります。
- 内視鏡検査
- 大腸X線検査
- 血液検査
- 糞便検査(便中カルプロテクチン・細菌培養検査)
なかでも大腸内視鏡検査は特に重要であり、内視鏡検査で特徴的な所見(浮腫、粗造粘膜、連続性病変、びらん・潰瘍、血管透見の消失、血性膿性分泌物)が認められた場合には生検による組織検査を行います。組織検査で、「陰窩膿瘍」「腺管杯細胞の減少」「上皮の変性・脱落・消失」などの所見が認められた場合に、その他の所見も合わせて総合的に診断が確定します。
内視鏡検査において、直腸だけに炎症がみられるタイプを「直腸炎型」、左側の結腸まで炎症がみられるタイプを「左側大腸炎型」、右側の結腸まで炎症が及んでいるタイプを「全大腸炎型」と分類します。
診断が確定したあとも、基本的には1年に1回定期的な内視鏡検査を実施して、炎症が悪化していないか経過観察していきます。
治療方法
潰瘍性大腸炎の治療には、薬物療法や手術療法がありますが、病気自体を根治させることは非常に困難です。長期的に炎症が落ち着いた状態(寛解状態)に保つことが重要です。
薬物療法では、以下のような薬剤が使用されることがあります。
- 抗炎症薬
- 免疫抑制剤・ステロイド
- 生物学的製剤
- 抗生物質
また、症状が重い場合や合併症がある場合には、手術療法が必要な場合があります。
手術療法では、患部を摘出することがあります。
潰瘍性大腸炎の治療期間は、個人差があります。
治療期間には、病気の進行度合い、治療法の種類、患者の年齢や健康状態などが影響します。また、治療の効果を判断するためには、治療を開始してから数週間から数ヶ月かかることがあります。
一般的に、急性期の症状を緩和するための治療には数週間から数ヶ月かかります。軽度から中等度の患者には、5-aminosalicylic acid (5-ASA) 、ステロイド、免疫抑制剤などの薬物療法が処方されることがあります。症状が改善した後も、維持治療が必要となります。維持治療には、病状を抑制する薬物療法や、免疫療法が用いられることがあります。
ただし、治療の効果が十分でない場合や、重症度が高い場合には、手術が必要となることがあります。手術の場合には、入院期間が長くなることがあります。
潰瘍性大腸炎は、一度発症すると完全に治癒することはできませんが、適切な治療を継続することで、症状を抑制することができます。定期的なフォローアップや、治療計画の見直しを行うことが重要です。
潰瘍性大腸炎は、専門家の治療を受けることが重要です。
症状がある場合には、早めに医師に相談することをおすすめします。